いまや、さまざまなところで「クラウド」という言葉を聞くようになりました。ITに詳しくない方だと、「雲がどうしたの?」と不思議に思われるかもしれません。そこで今回は、ITの世界で、なぜこんなに「クラウド」が注目されるのかをご説明します。この雲(クラウド)の登場によって、IT業界はたいへんなことになっているのです。
クラウドの登場でパソコンが”タダの箱”に逆戻り?
IT業界では「クラウド」という言葉を聞かない日はないほど、「クラウド」が一般的になりました。直訳すれば「雲」ですが、もちろん、空に浮かんでいる雲ではありません。IT業界でいう「クラウド」とは、インターネットの先にある、無数のサービス群を意味しています。
かつて、パソコンのことを「ソフトなければタダの箱」と表現していました。ワープロや表計算などのソフトをインストールして、はじめてパソコンは、仕事で使える道具になったのです。
しかし、「クラウド」の世界では、パソコンはどんどん”タダの箱”に近づいています。パソコンに求められるのは、インターネットに接続することだけで、これまでハードウェアやソフトウェアが果たしていた機能は、クラウド上のさまざまなサービスが代替するようになっているのです。
【図1】
機能は「所有」するものから「利用」するものへ
このような変化が起きた背景には、高速インターネットとスマートフォンやタブレットの普及があります。時間・場所に制限されず、いつでもどこでも高速なインターネットに接続できる環境が整備された結果、必要な機能を必要なときにインターネットから呼び出して利用した方が、いろいろ都合がよいということに、多くの人が気づきはじめたのです。
たとえば、メールを考えてみましょう。従来はメールソフトをパソコンにインストールし、複雑な設定をしてはじめてメールが送受信できました。しかし、クラウド型のメールなら、Webブラウザからログインするだけでメールを利用できます。しかも、別のパソコンでもかまいませんし、スマートフォンやタブレットでも利用できます。
顧客管理などの業務ソフトも同じです。従来は、高額なソフトを購入し、社内にサーバを用意してインストールし、複雑な設定をして、はじめて利用できていました。しかし、クラウド型のサービスなら、Webブラウザで契約後、ログインすれば、すぐに使い始めることができます。わざわざソフトやサーバを購入する必要もなければ、複雑な設定もいりません。ハードウェアをメンテナンスする必要もありませんし、不要になったら契約を解除すればよいのです。
これは、「所有」から「利用」への変化です。必要な機能を購入して「所有」するのではなく、必要なときに必要な機能を「利用」すればよいという、大きな考え方の転換が起きているのです。
【図2】
ビジネスでぜひ「利用」したいクラウドサービス
この連載では、以上のような観点から、ビジネスでぜひ「利用」したいクラウドサービスを取り上げ、そのメリット・デメリットを紹介します。
現在、さまざまなクラウドサービスが登場していますが、現実に、ビジネスで活用すると、大いに効果を発揮するサービスがたくさんあります。本連載では、次のようなサービスを取り上げる予定ですので、ぜひ活用の参考にしてください。
◆ストレージサービス | ストレージサービスとは、クラウドにデータを保存するサービスのことです。これまで、パソコンのハードディスクに保存していたデータをクラウド上に保存することで、さまざまなメリットが生まれます。 |
---|---|
◆メール・スケジュールサービス | メールやスケジュール管理をクラウドで提供するサービスです。Webブラウザだけあれば利用できるので、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットでも利用できます。 |
◆その他のサービス | 現在、クラウド上では、さまざまなサービスが開発されています。請求書や見積書を作成し、自動的に発送してくれるサービス。顧客管理や業績分析をしてくるサービスなど、従来の機能のたんなる代替ではなく、クラウドならではのまったく新しいサービスも登場しています。 |