クラウドを活用するなら、まず最初に取り組みたいのが「ストレージサービス」です。データのバックアップや共有が手軽にできるので、中小企業にとっては特に利用価値の高いサービスです。ただし、利用する際には、いくつか注意すべきポイントもありますので、ここではメリットとデメリットをあわせて紹介します。

東日本大震災が変えた企業のバックアップの考え方

 東日本大震災は、企業のデータバックアップの考え方を一変させました。たとえ、データを外部ハードディスクやテープにバックアップしていたとしても、同じ場所に保管していたら、建物を丸ごと破壊する地震や津波の前にはまったくの無力であることを思い知らされたのです。
 その結果、多くの企業が、バックアップをオリジナルとは物理的に異なる場所、遠い場所に保存するようになりました。実際に、東京に本社を置く大手企業の中には、電力会社の異なる九州や沖縄などのデータセンターと契約し、新たにバックアップのシステムを構築するところもありました。
 データのバックアップは、企業が災害等の緊急時に事業を継続するための計画(BCP)の一部でもあります。重要なデータ、たとえば、顧客データや在庫データが失われたら、企業は事業を続けることができません。そこで、データを遠隔地にバックアップし、万が一の場合には、データを素早く復旧して、できるだけ短時間で事業を再開できる体制作りにつとめたのです。
 これは、中小企業でも同じです。ただし、多くの中小企業は、遠隔地のデータセンターと契約し、テータをバックアップするほどの余裕はないはずです。そこで活用したいので、クラウドのストレージサービスです。

 

中小企業の強い味方! クラウドのストレージサービス

 クラウドのストレージサービスとは、インターネット上にデータを保存するサービスのことです。インターネット上で利用できる、自分専用のハードディスクのようなもの、と考えればよいでしょう。現在、代表的なストレージサービスには、次のようなものがあります。

 Dropboxは、最も古くから利用されていて、ユーザーの評価も高いサービスです。そして、Google Driveはグーグル、OneDriveはマイクロソフトが提供しているストレージサービスです。いずれも、ある容量までは無料で利用できますが、一定の容量以上になると有料になります。また、いずれも巨大なデータセンターにデータが保存されるため、自社で保存しておくより、ずっと安全です。

 いずれのサービスも、Webブラウザがあれば利用できますが、ぜひ活用したいのが、Windowsのデスクトップ用アプリケーションです。これをインストールすると、ハードディスクに専用のフォルダーが作成され、そこにファイルにフォルダーをコピーするだけで、クラウド上にも自動的に同じフォルダ・ファイルがコピーされるようになります。

 また、いずれのサービスも、iPhone/iPadやAndroidでも利用できます。それぞれ、専用アプリをインストールすれば、クラウド上のファイルに、いつでも、どこからでもアクセスできるようになります。

  • 【図1】

    Windowsのデスクトップ用アプリケーションをインストールすると、専用のフォルダーにフォルダ・ファイルをコピーするだけで、クラウド上にも同じフォルダ・ファイルがコピーされるようになります。
  • iPhone用のDropboxアプリ。iPhoneがあれば、どこからでもクラウド上のファイルにアクセスできます。

 

機密性の高いデータのバックアップには、しっかりとしたサポート付きのストレージサービスを選びたい

 とても便利で安全性も高いクラウドのストレージサービスですが、企業で活用する際には、注意すべき点が3つあります。

 第1は情報漏えいの心配です。前述したように、いずれのサービスも巨大なデータセンターで運営されているため、データが失われる心配はまずありません。ただし、ファイルを簡単に共有できるため、使い方を誤ると、無関係の第三者にもファイルが簡単にアクセスできてしまいます。

 第2は、いずれのサービスもデータセンターが海外にあるということです。原則として、クラウド上のデータに対しては、そのデータが保存されている国の法律が適用されます。このため、万が一の場合、たとえばテロ対策等としてデータセンターのデータが警察機関に押収されるといった可能性も、ないわけではありません。

 第3はサポートが十分ではないということです。前述の3つのサービスの場合、問い合わせは基本的にメールです。何か分からないことがあったら、すぐに電話で聞ける体制にはなっていません。

 以上のように、いくつかの注意点はありますが、クラウドのストレージサービスには、それを補ってあまりあるメリットがありますので、ぜひ、活用を検討してみてください。

 なお、機密性の高いデータのバックアップと復旧を最優先に考えるなら、バックアップ専用のクラウドサービスを利用するのもよいと思います。アマダアイリンクサービスでも、次のようなクラウドサービスを提供しています。

「SDDサポートサービス」であれば、前述した3つの心配はありません。情報を共有する機能がないので情報漏えいの心配はありません。また、データが国内のデータセンターに保存され、サポート体制もしっかりしています。十分なバックアップ/復旧の仕組みを構築したい場合は、ぜひ、ご検討いただければと思います。

次回は「メール・スケジュールサービス」を取り上げます。