最近、格安スマートフォンを販売する企業が増えています。「スマホはNTTドコモやau、ソフトバンクと契約するもの」と思っていた方の中には、「なぜ通信会社でもない会社がスマホを販売できるのか?」と不思議に思っている方も多いのではないでしょうか。その謎を解く鍵が「MVNO」です。今回は、MVNOの正体に迫ります。
スマートフォンを購入・利用できるのはドコモ、au、ソフトバンクだけじゃない
総務省の調査(注1)によると、いまや国民の約6割がスマートフォンを使っているそうです。20代にいたっては、その所有率は94%。若者にとっては、スマートフォンが生活に欠かせないアイテムになっていることがうかがえます。
企業でもスマートフォンの活用は活発です。スマートフォンを使えば、時間・場所を問わずメールを見たり、情報を調べたりできますから、仕事で使わないのはもったいないでしょう。
注1:総務省の「平成26年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」より。
ただし、スマートフォンの利用料はけっして安くはありません。現在、スマートフォンを利用している多くの方は、毎月、NTTドコモ、au、ソフトバンクのいずれかに利用料金を支払っていると思います。その金額は、1人あたり、だいたい6000円~7000円くらいではないでしょうか。
ところが、ここにきて、格安料金のスマートフォンが登場しています。中には毎月490円で利用できるものもあります。たとえば、インターネット通販で有名な楽天が提供する「楽天モバイル」は、月額525円や1250円で利用できるスマートフォンを販売しています。
しかし、そもそも楽天は、NTTドコモやau、ソフトバンクのような通信会社ではありません。それなのに、なぜ、格安のスマートフォンを販売できるのでしょうか? その秘密を解く鍵が「MVNO(エムブイエヌオー)」です。
モバイルインターネットの選択肢を拡大したMVNO
MVNOとは何かを説明する前に、基本的なことを確認しておきましょう。携帯電話やモバイルインターネットのサービスを提供するためには、全国に回線を引いて、無線基地局などの施設を作らなければなりません。こうした施設を「通信インフラ」といいますが、以前は、モバイルインターネットのサービスを提供できるのは、こうした通信インフラを持ち、総務省から免許を交付された企業だけでした。それが、NTTドコモ、au、ソフトバンクであり、これらの企業のことを「通信キャリア」呼びます(注2)。
注2:通信キャリアは他にもありますが、スマホ関連の大手通信キャリアはこの3社です。
しかし、通信インフラには膨大な投資が必要なので、その他の企業は簡単には参入できません。参入企業が少ないと、競争原理がはたらかず、利用料金が高止まりしたり、サービスが向上しない問題が起きます。そこで法律が改正され、他の企業でも携帯電話やモバイルインターネットのサービスに参入できる仕組みが導入されました。
具体的には、新しい企業が、通信キャリアの施設を借りて、携帯電話やモバイルインターネットのサービスを提供できるようにしたのです。こうした企業のことを「MVNO」といいます。MVNOは「Mobile Virtual Network Operator」の略で、日本語では「仮想移動体サービス事業者」といいます。
NTTドコモ、au、ソフトバンクをビルのオーナーだとしたら、MVNOは部屋を借りてお店を運営するテナントのようなものです。いままではビルのオーナー(通信キャリア)だけ出店できていたのが、それ以外の企業(MVNO)も、部屋を借りて出店できるようになったわけです。
MVNOのメリットは低価格と多様なサービス
では、私たち一般ユーザーにとってのMVNOのメリットは何でしょうか。それは、ズバリ、次の2つです。
1.低価格で携帯電話、モバイルインターネットのサービスを利用できる。
2.さまざまなサーヒスから自分に合ったサービスを選べる。
MVNOは、自前では通信インフラを持っていません。あくまで、通信キャリアのインフラを借りているだけです。通信インフラの維持・管理が不要で、新しい施設への投資も必要ないため、低価格でサービスを提供できるのです。
さらに、サービスの種類が豊富です。スマートフォンの使い方は、人によって異なります。通話はほとんどしないでネットだけ使う人もいれば、その逆もいます。メールや検索だけできればいい人もいれば、動画やゲームを楽しみたい人もいます。MVNOの事業者は、こうしたユーザーのニーズに合わせて、さまざまなサービスを提供しています。
安くていろいろなサービスが選べるのですから、MVNOを利用しない手はありません。ただし、MVNOを賢く利用するには、最低限、知っておきたいことがあります。次回は、それを説明したいと思います。