最近、「インダストリー4.0」という言葉をよく聞くようになりました。日本語では「第4次産業革命」という意味ですが、「革命」というほど大きな変化が起きているのでしょうか? また、中小企業には何か関係があるのでしょうか? 第1回は「インダストリー4.0」とは何かについて、具体的にご紹介します。

 

いま起きている第4の産業革命

 最近、製造業の分野で頻繁に聞くようになった言葉が「インダストリー4.0」です。日本語に訳すと「第4次産業革命」という意味です。「第4次」と聞くと「第1」から「第3」も気になると思います。調べたところ、次のとおりです。

  1. 第1次……18世紀から19世紀にかけて起きた水力や蒸気機関による工場の機械化
  2. 第2次……19世紀後半の電力の活用
  3. 第3次……20世紀後半に生まれた「プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)」(工場などで自動制御に使われる装置)による生産工程の自動化

つまり、「インダストリー4.0」は、こうした過去の産業革命に匹敵する大きい出来事ということになります。

「インダストリー4.0」という言葉を最初に使ったのはドイツ政府です。ドイツ政府は、2010年に「ハイテク戦略2020」という10年後を目指した経済政策を発表しました。そして、2011年に発表したアクションプラン中で「インダストリー4.0」という言葉をはじめて使ったのです。

 

  • DMM mobileの動作確認端末一覧ドイツの新ハイテク戦略の資料※平成27年1月29日に開催された科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合で配布された資料

 

ドイツのインダストリー4.0のキーコンセプト「スマートファクトリー」

ドイツ政府の「インダストリー4.0」で最も重要なコンセプトは、「つながる工場(スマートファクトリー)」です(注1)。これは、IoTの技術で複数の工場(異なる企業の工場も含みます)をつなぎ、さまざまなデータをリアルタイムに共有・分析しようとする考え方です。

注1:「スマートファクトリー」には「考える工場」という訳もあります。

製造業における生産方式では、「ライン生産方式」と「セル生産方式」が知られています。ライン生産方式は同じものを大量生産するのに向き、セル生産方式は高品質製品の少量生産に向いています。

これに対して、スマートファクトリーでは「ダイナミックセル生産方式」が導入されます。これは、ライン生産方式とセル生産方式の長所を併せ持つ方式で、市場ニーズの変化に合わせて、高品質な製品を最適な分量で最適なタイミングで生産できる方式です。そして、その実現に不可欠なのがIT、特に最近注目されているIoTの技術ということになります。

ドイツの「インダストリー4.0」が目指す世界を言葉でシンプルに表現したら、次のようになると思います。

工場が業界や企業の垣根を越えてつながり、あたかも1つの工場のように働いて、
市場ニーズの変化に合わせて、多様な製品を最適な量で最適なタイミングで製造する。

トヨタがドイツのIoT規格を採用した意味は?

「インダストリー4.0」の実現に向けて、ドイツは国をあげて取り組んでいます。そこで重要になるのが「標準化」です。異なる企業間で工場をつなぐためには、さまざまな規格の「標準化」が不可欠だからです。

ただし、「標準化」はドイツ国内の話にとどまりません。ドイツ企業の工場は世界中にあります。その工場が標準化された規格を採用し、互いにつながりはじめたら、他国の企業はどうすればいいでしょうか?

そうした折、日本企業にとって示唆に富むニュースが流れました。

○ 工場IoT化のコンセプトに合致、トヨタがEtherCATを採用

トヨタが採用した「EtherCAT」という規格は、生産ラインの機械に取り付けたセンサーの情報をやりとりする規格で、ドイツで開発されたものです。従来は、日本電機工業会が策定した「FL-net」という規格を使っていましたが、対応機器が日本製に限られるため、「EtherCAT」を採用したということです。

これはインダストリー4.0の「規格」のデファクトスタンダードをめぐる競争が起きていることを意味しています。また、その競争において、ドイツがリードしていることも意味しています。

次回は、インダストリー4.0をめぐる米国の動きをご紹介します。

<参考リンク>

○ ドイツの「第4次産業革命」 つながる工場が社会問題解決

○ 今さら聞けない「インダストリー4.0」の基本、IoT で何が変わるのか

○ トヨタがインダストリー4.0でドイツの通信規格を採用した先見性

○ インダストリー4.0 ジャパン

○ Industry 4.0 Central